時系列分析手法を用いた売上高の異常値検知データ分析についてご紹介します。

【使用するデータ】

仕訳データまたは売上明細データ

1.時系列分析手法とは

時系列分析手法は過去の長期にわたって発生するデータについて時系列別に集計することで季節的変動等の時系列別の傾向を把握する分析手法です。

この時系列別のデータの分布がビジネスの傾向と整合していない場合、異常値となって現れます。例えば予算の着地見込みが見える決算月付近で予算の未達を埋めるために多額の架空売上高が計上される不正が行われると決算月の売上高が他の月と比べて多額になる傾向が見られます。このように売上高の時系列別のデータを分析することで異常値検知を行います。それではテストデータを見ながら具体的な分析手法を解説します。

2.テストケースの概要

A社はソフトウェア開発業の会社で受託開発と自社サービス(SaaS)を行う会社です。

  • 会社名:株式会社A
  • 業種:ソフトウエア開発業(受託開発と自社SaaS)
  • 決算月:12月末

【特徴】

受託開発は自治体向けが多く、自治体の予算の締め日が3月末であるためそれまでの強い納品要請があり、3月末に受託開発の売上高が増加する傾向があります。

3.時系列別データ分析

【全売上の時系列別売上高】

売上データを時系列別に集計しました。SaaS事業が順調に成長し、受託開発の割合が下がっていることがうかがえます。傾向をつかむためこのデータをブレークダウンしていきます。今回は受託開発の売上分析を想定して売上セグメントを受託開発事業に絞ります。

【受託開発事業の時系列別売上高】

受託開発の売上高のみに絞りました。3月の売上高が増加しており、自治体の予算締めに合わせて3月末に納品が集中するという季節的傾向がうかがえます。さらに日付別にブレークダウンします。

【日付別売上高】

日付別に売上高を集計すると月末付近での売上計上が多いことが見受けられます。一般的に月末付近の売上ボリュームが大きいと押し込み販売の懸念があります。少しでも売上を増やすために架空の売上や翌月売上分を月末に強引に売上計上する不正の手段です。

結論から言ってしまうと今回は12月の決算月に売上をかさまししたと想定して12月月末付近の売上データを増やしていました。

【12月分の時系列別売上高】

12月の売上高の時系列売上高を分析すると月初は少なかった売上高のボリュームが月末に近づくにつれて著しく増加しています。不正の兆候があるため担当者、顧客へのヒアリングや必要な証票が揃っているか検証手続きを実施します。

4.まとめ

このように不正の兆候のある売上データについて検証作業を行うことでリスクの高い項目に集中して効率的に対処することが出来ます。

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