目次
経費精算システム導入の目的
経費精算システムとは、経費の申請や承認など経費精算を行う上で必要な業務を効率化するシステムです。
経費精算システムを導入することで、従業員の精算に係る時間が削減されれば大きなコスト削減効果が望めます。
本記事では経費精算システムを導入するにあたり実務上検討課題として考えられる事項を解説します。
入力作業の手間削減
経費精算システムの導入により、従業員や経理部門の入力作業が大幅に短縮されます。
従業員は、経費の申請や報告を簡単に行うことができ、経理部門もまたデータの収集や整理にかかる時間を削減することができます。
承認作業の効率化
システムが自動化されることで、経費の承認作業もスムーズに行うことができます。
経費の申請から承認までのフローが一元管理され、管理者はリアルタイムで状況を把握できるため、迅速な判断が可能となります。
実務上の導入における検討ポイント
勘定科目の設定について
経費精算システムで利用する勘定科目について利用者目線や会計システムの勘定科目との連携を考慮して検討が必要です。
具体的には以下のポイントが挙げられます。
- 利用者は会計に詳しくないので経費精算システム用の科目をどのように設定するか。
- 経費精算システムから会計システムへ連携させる場合に勘定科目をどのようにそろえるか。
- 使用する経費科目をどれにするか(人件費や減価償却費など明らかに使わないものは除く等)。
売上原価と販管費の区分の判定方法について
経費は同じ勘定科目でも用途によって売上原価または販管費に計上される場合があります。
そのため、どのように売上原価か販管費か判定するか検討する必要があります。
一例として所属組織で判断する方法があります。
申請者がどの部署に所属しているかにより、「売上原価」と「販売費及び一般管理費」のどちらに経費が計上されるかが変わってきます。
例えば、製造業の場合:
製造に携わる従業員の経費申請は、基本的に「売上原価」で計上されます。
販売活動に携わる従業員の経費申請は、「販売費及び一般管理費」(販管費)で計上されます。
このような区分が存在するため、経費精算システムの設定時には、会計システムに連携した際にどの区分で計上されるかを定義づけする必要があるため十分な注意が必要です。
正しい計上を行うことで、経理処理の精度が向上し、企業の財務状況の適切な把握が可能となります。
消費税区分の取り扱いについて
消費税計算のため、10%、8%等の税率や課税対象かどうかを会計システムで区別するための区分が消費税区分です。
消費税の区分に応じて、それぞれ異なる取り扱いが必要です。
各区分は、取引の性質や消費税法の適用により異なり、適切な区分で計上する必要があります。
会計システムに接続する際には、これらの消費税区分を整理し、システム内で一貫した取り扱いができるように設定するよう検討する必要があります。
以下代表的な消費税区分を紹介します。
課税仕入10%
これは、消費税率が10%適用される経費に関する消費税区分です。
一般的に、多くの商品やサービスの経費にこの税率が適用されます。
この区分での経費には、10%の消費税が課され、事業者はこの税額を仕入税額控除として計上します。
課税仕入8%
この区分は、消費税率に8%軽減税率が適用される経費に関わります。
主に、テイクアウト・宅配品等の飲食料品にこの税率が適用されています。
経費に対して8%の仕入税額控除を計上します。
非課税仕入
非課税仕入は、消費税法の規定により、消費税が課せられない取引です。
消費に負担を求める税としての性格から課税の対象としてなじまないものや社会政策的配慮で定められたものが非課税仕入に該当します。
この区分では、経費に消費税は課されないものとして取り扱います。
不課税仕入
不課税仕入れは、消費税法の対象外となる取引を指します。
例えば、国外取引、対価を得て行うことに当たらない寄附や単なる贈与、出資に対する配当などがこれに当たります。
この区分では、経費に消費税は課されないものとして取り扱います。
適格請求書発行事業者以外の者(免税事業者等)からの仕入に係る経過措置
2023年10月1日から施行されたインボイス制度により、適格請求書発行事業者以外(免税事業者等)からの課税仕入に関する新しい経過措置が設けられました。
この経過措置により、適格請求書発行事業者以外からの課税仕入の際、支払った消費税は基本的に仕入税額控除の対象外となります。
しかし、帳簿及び請求書等の保存要件を満たしていれば、一定期間、仕入税額相当額の一定割合が仕入税額とみなして控除が可能です。
期間 | 割合 |
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで | 仕入税額相当額の 80% |
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで | 仕入税額相当額の 50% |
経過措置を反映させるために、消費税区分は「課税仕入(控除80)」や「課税仕入(控除50)」のように、控除可能な税額の割合を記載して区分することが考えられます。
経費精算システムで費目を設定する際にはそれぞれの消費税区分の適用ルールと税率を理解し、適切な区分で経費を計上することが重要です。
電子帳簿保存法への対応
電子帳簿保存法は、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法に関する法律です。
この法律は、国税関係の帳簿を電子データとして、一定の要件を満たして保存することを認めています。
近年、電子帳簿保存法の改正により、電子帳簿の保存要件が緩和され、電子取引におけるデータの電子的保管が求められるようになっています。
経費精算システムの中には領収書等の証憑を画像で添付することで精算することができるタイプもあります。
その場合、経費精算において使用される証憑を電子帳簿保存法の要件を満たす形式で保存する必要があります。
導入にあたっては電子帳簿保存法の要件を確認し、経費精算に使用する証憑が適切に保存される仕組みを検討する必要があります。
具体的な電子帳簿保存法については別の記事でまとめていますのでそちらをご参照ください。
交際費(接待飲食費)の取り扱いについて
経費精算システムで交際費に関する費目を設定する場合、交際費には損金不算入の規定があるため税務申告の際に集計できるように交際費区分を設ける必要があります。
飲食費に関する取り扱い
飲食等の費用について、参加者1人当たり5,000円以下の場合、その費用は交際費から除外されます。
経費精算システムでもこの判定が必要となります。
その場合、経費精算システムでは社内交際費かどうかの判定が必要なので金額、参加人数、参加者が社内か社外かという情報を経費精算システムで収集する仕組みを作るかどうか検討する必要があります。
また、飲食店が免税事業者の場合、現時点では経過措置として仕入税額相当額の80%が控除されるため、税込金額からその分を考慮して、参加者1人当たりの飲食費の正味金額を算出して判定する必要があります。
この判定に必要な参加者情報や交際費区分を経費精算システムでどのように集計するか、どのように会計システムに連携するか検討する必要があります。
参考:企業規模による損金不算入額の違い
企業規模による損金不算入額の違い
期末資本金100億円超の企業:支出交際費等の全額
期末資本金1億円超100億円以下の企業:支出交際費等 - 接待飲食費 × 50%
期末資本金1億円以下の企業:※
(1) 支出交際費等 - 接待飲食費 × 50%
(2) 支出交際費等 - 年800万円
(1)と(2)のいずれか大きい方を適用
※資本金の額が5億円以上の法人の100パーセント子法人等は除外
会計システムとの連携についての検討
経費精算システムの導入に際して、会計システムとの連携方法を検討する必要があります。
経費精算システムと会計システムが同じERPシリーズであれば、直接的な連携がしやすく、特に効率的にシステムを運用することが可能です。
場合によっては、簡単な操作だけで両システムが連携できるケースもあります。
一方で経費精算システムと会計システムの開発元が異なる場合には、両システム間でのデータのやり取りに注意が必要です。
マスタデータの管理方法が異なる可能性があるため、変換処理を行ってデータを適切に取り込む必要があります。
データの取り込み方法としては、CSV出力やAPI連携が考えられます。
これらの点を考慮して、システムの連携方法を選定しましょう。
マスタ連携についての検討
経費精算システムでは、主に以下のマスタデータが必要です。
それぞれのマスタは、経費精算のプロセスを効率的かつ正確に進めるために必要なデータを管理しており、連携方法や更新頻度について検討する必要があります。
ユーザマスタ
内容:従業員の基本情報(名前、社員番号など)が含まれます。
用途:経費申請や承認の際に、誰が行ったのかを識別するため。
課題:人事労務マスタからの情報更新が必要。
部署マスタ
内容:会社の部署に関する情報が含まれます。
用途:経費が発生した部署の識別や、承認フローの設定に使用。
課題:人事労務マスタからの情報更新が必要。
プロジェクトマスタ
内容:会社のプロジェクトに関する情報が含まれます。
用途:経費が発生したプロジェクトの識別や、コストの分配に使用。
課題:プロジェクト管理システムとの連携が必要。
勘定科目マスタ
内容:会計に使用される勘定科目の情報が含まれます。
用途:経費の種類や計上方法の識別に使用。
課題:会計システムとの連携が必要。
経費精算を行った場合の支払処理
経費精算を行った場合に会社と従業員の間で金銭の支払処理の方法を検討する必要があります。
以下の方法が考えられます。メリット、デメリットを考慮し、自社にあった方法を選択します。
方法 | メリット | デメリット |
給与支払い時に加算して支払 | ・振込手数料を削減できる。 ・支払処理をまとめることで事務負担を減らす。 | ・給与計算との連携が必要。 ・立替から支払いまで間が空くので従業員に負担を強いることになる。 |
給与とは別に経費申請の都度、銀行振込で支払 | ・従業員の負担が少ない。 | ・振込手数料が増える。 ・支払回数が増えるので事務負担が増える。 |
給与とは別に経費申請の都度、現金で支払 | ・従業員の負担が少ない。 ・振込手数料が削減できる。 | ・小口現金の管理が必要。 ・現金の授受に手間がかかる。 |
近年の経費精算システムの進化に伴い、全銀フォーマットなどのFBデータを出力できるシステムも登場しています。
この機能を利用することで、FBデータを直接銀行のシステムに投入するだけで支払処理が容易に完了します。
特に従業員数が多く、経費申請の件数が多い場合には、FBデータ作成に対応している経費精算システムの導入が非常に効果的です。
このようなシステムを活用することで、経費精算のプロセスがさらに効率化され、業務のスムーズな運用が期待できます。
経費精算の承認ワークフローの重要性と導入計画について
経費精算の承認ワークフローの設定
経費精算は、費用発生と現金支出に関わる重要なプロセスです。
そのため、適切な統制を設ける必要があります。
これには経費精算システムに搭載されている承認ワークフローの機能を利用し、申請者や申請内容に応じて適切な承認者による承認フローを経由するよう設定することを検討します。
大企業向け経費精算システムでは条件に応じて複雑な承認フローを構築することも可能です。しかし、設定が複雑になると人事異動のメンテナンス等の運用上の負荷が増えるため、バランスを考慮して設定します。
一般的なフローは、申請者の所属部署の組織の承認、管理部等の統括する組織の承認、経理部の承認、といった順序が考えられます。
承認ワークフローの導入計画
経費精算システムの導入にあたっては、人事異動のタイミングと重なり申請者や承認者の所属情報が変更になる可能性も考慮する必要があります。
特に導入時期によっては、これらの変更が手間となる場合もあるため、計画的に導入することが必要です。
事前に可能な限り詳細な計画を立て、スムーズな導入に備えます。
おわりに
Qureテクノロジーズでは経費精算システムをはじめとしたERP導入支援を実施しています。
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